自動車販売店が提供する自社ローンは、その独自の審査方法により、銀行やディーラーのカーローンよりも審査に通りやすいという特徴があります。他社でローンが組めない方や信用情報に問題を抱える方にとって大きな魅力でしょう。
一方、「自社ローンは怖い」や「利用しないほうがいい」といった意見も存在し、利用すべきか迷う方も多く見られます。これらの意見が生まれる背景や理由、自社ローンの具体的なしくみを知ることは、安心して選択をするために非常に重要です。
ここでは、なぜ自社ローンは怖いといわれるのか、そのメリットや注意点、そしてどのような方に向いているのかを詳しく解説していきます。
自社ローンは怖いというイメージを持たれる5つの理由
自社ローンに対して不安や恐怖を感じてしまう方は少なくありませんが、それは自社ローンのデメリットと仕組みを十分理解せずに利用することが主な原因であると考えられます。では、具体的にどのような問題が生じる可能性があるのかを見ていきましょう。
理由1.手数料や保証料は上乗せになる
「金利0%」という言葉に惹かれる方の多い自社ローンですが、実際は必ずしも安価な選択肢とは限りません。
自社ローンには通常の金利が適用されない一方で、手数料や保証料が車両価格に上乗せされるため、支払総額は意外と高くなる可能性があります。これらの追加費用は一般的に車両価格の10〜20%とされており、この分が毎月の支払いに含まれます。
具体的な金利は銀行のマイカーローンやディーラーのカーローンによりますが、1〜8%程度が目安です。頭金の金額や支払い回数、金額によっては、自社ローンの手数料負担がカーローンの金利負担よりも高くなる場合があるります。そのため、これらのローンの金利と自社ローンの手数料は単純に比較することはできません。
中古車販売店では、事前に総支払額の計算と支払い計画の作成、利用者の収入に見合った車両価格の確認などを行い、手数料や総支払額を確認することが可能です。カーローンの金利負担と比較しながら、自社ローンを利用するか否かを検討すると良いでしょう。
理由2.キャンセル時にトラブルとなるケースもある
自社ローンの契約前にキャンセルしようとしたら、書類も交わしていないのにキャンセル料を請求された、といった事例が一部で報告されています。弁護士サイトにも同様の相談が寄せられ、販売店によってはキャンセル時にトラブルが起こる可能性があることが明らかになりました。
キャンセル料が正当であれば、その分だけ予定していた資金が減少します。一方、不当であれば、販売店との対話に時間や労力を消耗することになり、場合によっては弁護士を介して解決するために追加費用が発生することもあります。
誰もがキャンセルを予定して車を探すわけではありませんが、キャンセルする必要が生じる状況に直面する可能性は誰にでもあります。そのため、車を確実に購入する意志があるかどうか、慎重に検討する必要があります。
理由3.厳しい取り立てに遭うというケースもある
自社ローンの支払いが遅れると、さまざまな問題が起こります。具体的には販売店が支払いを求めるために自宅に来たり電話をかけたりする、「取り立て」と呼ばれる行為です。厳しい取り立てには、自宅への訪問が含まれることもあります。
自社ローンで購入した車は、支払いが全て終わるまで販売店の名義となります。つまり、支払いが遅れると、販売店が車を強制的に取り戻すこともあります。
もちろんきちんと返済をしていれば、このような取り立てを受ける心配はありません。
しかし、人生は予測できないもの。突然の失業や社会状況の変化で収入が大幅に減少することもあります。そんな時でも、自社ローンの返済は待ってくれません。
自社ローンを利用する場合は、どんなことがあっても返済を遅らせない強い決意が必要です。もし何らかの理由で取り立てに遭ってしまった場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。そしてきちんと返済計画を立ててそれを実行していきましょう。
理由4.状態の良くない車両を購入させられる場合がある
一部の中古車販売店では整備不良の車両を提供している可能性があるため、自社ローンで中古車を購入する際は車両の状態に注意が必要です。中古車の中には外装がきれいであっても整備が十分でない、状態の良くない車両が混ざっている可能性があります。
車両の安全性について気になる時は、実績や口コミの他、営業年数、車両の見た目、店員の雰囲気などを総合的に判断することが重要です。
弊社「KSTオート」では整備はもちろん、車両の状態や修理歴、走行距離、車検状況などの情報を細かく記録および公開しています。お客様にご安心いただけるサービスを目指しておりますので、何か不明点がありましたらお気軽にご相談ください。
理由5.GPSや遠隔制御装置を車両に取り付けている場合がある
自社ローンを提供している店舗や一部の中古車販売店では、支払い遅延時の対応策として、GPSや遠隔制御装置を車両に取り付ける場合があります。
この措置は支払いの滞納があった場合に車両の位置を特定し、遠隔操作でエンジンがかからないように制御するためのものです。また、車両の盗難防止や支払い遅延後の車両利用を防ぐ目的も兼ねています。
その一方で、個人の位置が特定されることに対して恐怖感や不快感を覚える人もいます。とはいえ遠隔によるエンジン停止措置は、支払いの遅延や拒否があった場合のみに実施されるため、期日までに支払いを行い、ローンを滞りなく返済していれば特に影響はありません。
支払い遅延はカーローンでも差し押さえといった問題に発展します。支払い遅延を避けるためには、利用者自身が支払い計画を慎重に検討する必要があります。契約どおりに利用し、計画的に支払いを行うことで安心して車両を使用しましょう。
自社ローンは怖くない!利用する3つのメリット
自社ローンには一見、怖いといったイメージにつながるデメリットがあるかもしれません。しかしそれと同時に、車を購入する際に活用できる4つの重要なメリットも存在します。これらについて以下でご紹介します。
1.総量規制や返済負担率を気にせず使える
総量規制とは「貸金業者からの借入れは、原則として年収の3分の1まで」という規制のことを指します。例えば年収300万円の方は、合計で100万円までしか借入れができません。
総量規制により借入の限度が設定されますが、自社ローンを含む車のローンは総量規制の対象外となります。他社からの借入れが多い方でも車のローンを利用できる可能性があります。
しかし、他社の借入れが多いと返済負担率などの問題から審査に落ちてしまうこともあるため、注意が必要です。審査に落ちた場合、ノンバンク系のフリーローンなどを車代金の支払いにあてようとすると、今度は総量規制の影響を受けてしまいます。
ただし、自社ローンはローンとは異なるしくみで成り立っているため、総量規制や返済負担率を気にせずに使えるのがメリットです。借入の可能性を広げ、自身の資金計画をより柔軟に進めることが可能です。
2.マイカーローンよりも審査に通りやすい
他社での借入れがある方や過去に借金を滞納していたなど、信用情報に不安がある方でも、自社ローンの審査は一般的なマイカーローンよりも通りやすいとされています。
自社ローンの審査は各販売店が独自の基準で行い、信用情報機関への照会を行わずに、収入や勤務先を書類でチェックするケースや、直接面談を行って判断するケースなどさまざまです。
金融情報に問題がある方が利用できることを強みとしている販売店も多く、銀行やディーラーのマイカーローンに比べて審査のハードルが低いといえるでしょう。ただし、絶対に審査に通るというわけではないため、利用の際は各販売店の審査基準を事前に確認することが重要です。
3.早く車を手に入れることができる
銀行のマイカーローンは厳正な審査を基に融資が決定されますが、審査申込みから実際にお金が振り込まれて車を購入できるようになるまでに数日から数週間かかる場合があります。
一方、自社ローンは申込み、審査、車の購入手続きをすべて一貫して販売店が行うため、金融機関と販売店の間のやりとりが発生せず、その分スピーディーに手続きを進められます。
そのため自社ローンは書類審査の手間や時間が少なく、中古車が中心となることから、早い場合は審査を申し込んだ当日に車を購入して納車まで完了できるという利点があります。
ディーラーのマイカーローンも審査がスピーディーですが、新車の納車までには日数がかかるため、早く車を手に入れるには自社ローンの利用が一層便利であるといえます。
自社ローンを利用する際の3つの注意点
それでは、自社ローンを利用して車を購入する際の注意点とデメリットについて、特に「自社ローンが怖い」というイメージ以外の側面を中心に詳しく解説していきましょう。
1.利用できる販売店や車が限られる
自社ローンの利用が可能なのは、全ての自動車販売店ではなく、ごく一部の販売店に限られています。
ディーラーでは自社ローンが利用できないため、中古車が中心となるというのが実情で、その中にも自社ローンを提供していない場合や提携ローンのみを扱っている店舗も存在します。利用可能な車種についても制限があり、新車の購入は滅多に許されず、利用限度額が他のローンより低く設定されていることが多いので、高額な車の購入には向かないことが多いです。
その結果自社ローンは、年式が古かったり修復歴のある中古車や、軽自動車のような安価な車種が主に選ばれる傾向にあります。自社ローンの利用を希望する方は、まず利用できる販売店を特定し、その後で車を探すと良いでしょう。
2.支払いを終えるまで所有権を持つことができない
自社ローンを利用した車の購入の場合、一般的に「所有権留保」という形式が採られます。この形式では、車は完済するまで購入者ではなく販売店の名義となります。
銀行などのマイカーローンと異なり、車は納車した時点で購入者の所有物となるわけではありません。つまり支払いが全て終わるまで、購入者は自身の名義の車に乗ることはできないというのがこの形式の特徴です。
それゆえ、自社ローンで購入した車の所有権は、利用者が支払いを終えるまで販売店側に存在します。それは所有権のない車を勝手に売却できないという制限も含みます。このため、支払いを終えるまで車の乗り換えができないというデメリットが存在します。
3.保証人や保証会社の利用を求められるケースがある
自社ローンは不払いリスクの高い方にもサービスを提供するため、支払いが延滞した場合に備えて保証人や保証会社の利用を求めることが一般的となっています。
特に保証人には安定した収入があることが必須条件であり、そのため親族に依頼するのが常習となっていますが、年金生活者などでは収入面で不十分な場合も見受けられます。
保証人が見つからない場合や収入条件を満たせない場合には、保証会社を利用するという選択肢も存在します。ただしその場合保証金が上乗せされることになるため、利用時にはその点を十分に考慮する必要があります。
自社ローンに向いている人の特徴は4つ
自社ローンは、メリットとデメリットが混在します。そのため、利用前には注意深く検討することが必要です。しかし次の5つの条件のいずれかに該当する人には、自社ローンの利用の方が向いている可能性があります。詳しく見ていきましょう。
特徴1.過去の取引履歴に不安がある
自己破産や任意整理の経験があり、信用情報機関からの事故情報が消えていない方や、借金の滞納履歴がある方にとって、一般的な銀行や信販会社のカーローン利用は困難であることが一般的です。
過去に金融事故を起こした経験があるとはいえ、現在は安定的な収入を得ており、今後の返済も滞りなく行える見通しが立つ方には、自社ローンの利用が適しているかもしれません。
自社ローンは信用情報機関に保存されている過去の履歴を必ず確認するわけではありません。これにより、ネガティブな信用情報が理由で他のカーローン審査に落ちてしまった方でも、現在の収入さえ安定していれば、自社ローンの審査に通り、車購入の一手段として活用できる可能性が十分にあると言えるでしょう。
特徴2.非正規雇用として働いている
非正規雇用として働いている方々、たとえばアルバイトやパート、派遣社員などは、一般的な銀行や信販会社のカーローンの審査では収入の安定性という面で不利になる可能性があります。これは非正規雇用が正規雇用に比べて収入が不安定だと判断されるからです。
しかし自社ローンの審査では、継続的な収入の有無が重視される傾向が強いため、非正規雇用であっても安定した収入があれば、審査を通過する可能性が十分にあるのです。
たとえ自社ローンが他のカーローンに比べて若干割高になる場合でも、この安定性は大きな魅力と言えるでしょう。
特徴3.複数のローンを組んでいる
自社ローンは、他社からの借入れがある人でも利用可能なケースがあります。これは、総量規制や返済負担率を一様に審査するのではなく、個々の状況を見て支払能力があるかどうかを判断するためです。
銀行や信販会社のローンも、複数のローンを持っている場合、返済負担率や信用情報を検証し、返済能力が低いと見なされたり、月々の返済負担が大きすぎると判断されることがあります。
通常、ローンを組む際には、年収に対する全ローンの合計年間返済額の割合を示す返済負担率がチェックされます。その上限は金融機関によって異なり、多くの場合、3割程度が目安です。複数のローンを組んでいると返済負担率が高くなり、一般的なローン審査では不利に働きます。
しかし、自社ローンは販売店独自の審査基準に基づくため、他のローンの借入額を考慮しない販売店であれば、高額な借入れをしている方でも利用可能な場合があります。
ただし、返済能力を超えた借入れは家計に負担をもたらす可能性があるので、返済計画をしっかりと立てて利用することが大切です。
特徴4.勤続年数が短い
勤続年数が短いということは、一般的なカーローン審査でネックとなることは少なくありません。特に就職や転職をして1年未満の方は、通常のカーローンの審査には通りにくい可能性があります。審査の厳しいものでは勤続年数が概ね3年以上であることが求められる場合もあります。
しかし自社ローンでは勤続年数が1年以下であっても、その他の状況などを含めて総合的に判断されます。そのため勤続1年未満だからといって一律に審査に落ちるということはありません。
このように、勤続年数が短い方でも自社ローンの利用が可能なため、通常のローンの審査に通るのが難しい方には自社ローンが適していると言えます。ただし、自社ローンに対して不安を感じる方には、自社ローン以外の方法で車を利用することをおすすめします。
自社ローンは怖いでよくある3つの質問
自社ローンは怖いでよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
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ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
質問①自社ローンの企業は反社会勢力が絡んでいる?
「自社ローンの企業はヤクザが経営しているに違いない」という意見が一部で見られますが、その実態はどうなのでしょうか。
自社ローンと一言でいっても、その背後には数多くの販売店が存在します。しかし、実際にどれくらいの自社ローン中古車販売店が反社会勢力と関連しているかは、具体的な数値で示すのは難しいのが実情です。
中には「接客態度が乱暴だった」や「取り立てがヤクザみたいだった」という声も耳にします。だからと言って、すべての自社ローン中古車販売店が反社会勢力と結びついているわけではありません。実績のある自社ローン中古車販売店であれば、その可能性は大いに低いと考えられます。
実際に暴力団排除条例により、反社会勢力と関係のある顧客に対しては販売しないと明言している販売店がほとんどです。
したがって「自社ローンの企業が全て反社会勢力と関連している」との断定は早計と言えるでしょう。
質問②そもそも自社ローンとは何?
自社ローンとは、販売店が自社で提供しているローンの仕組みで、主に中古車販売店などで利用されます。
一般的な自動車ローンやカーリースと比較して、自社ローンは信販会社を通さずに、販売店が独自の基準で顧客の信用状況を審査し、融資を直接購入者に行います。つまり「販売店が車の購入代金を立て替えてくれる仕組み」といえます。
これに対し金融機関やファイナンス会社が提供するローンでは、顧客の返済能力だけでなく、信用情報機関から提供される情報に基づいた審査が必要となります。自社ローンの審査基準は販売店独自のものなので、一般的な自動車ローンの審査よりも通過しやすいという特徴があります。
質問③トヨタの自社ローンは通りやすい?
カーローンの中には、ディーラーが展開するローンがあり、その代表的なものとしてトヨタファイナンスの自社ローンが存在します。
トヨタファイナンスのカーローンの特徴は、車を担保にお金を貸すため、完済するまで名義人がトヨタになるということです。万が一返済が困難になった場合でも、担保としての車を引き取り売却するため、貸す側のリスクは低く設定されています。
これらの条件から、トヨタファイナンスのカーローンは比較的通過しやすい傾向にあると言われています。その一因として、審査に収入証明が不要なケースが多いことも挙げられます。
ただし、信用情報に問題が無く、収入と返済金額のバランスが取れていることが審査を通過するための基本条件となります。したがって、これらの条件を満たしていない場合、トヨタの自社ローンであっても通らない場合があるので注意しましょう。
まとめ
自社ローンの基本知識から、メリットとデメリット、注意点について説明してきました。インターネットには自社ローンが怖いという意見や誤った情報が飛び交っていますが、これらはすべて事実とは限りません。
自社ローンの一部には、金利が0%だとしても車の価格や手数料が高くなるというデメリットがあります。そのため、特別な理由がない限り、自社ローンの利用はおすすめしません。
ただし自社ローンは審査が通りやすいため、どうしても車が必要で、自社ローンのリスクを理解したうえで利用するのであれば、有用な選択肢となるでしょう。
車は生活に欠かせない存在となっている地域も多いですが、車の購入は決して安いものではありません。自社ローンを利用するかどうか決めるときは、そのメリットとデメリットをしっかりと比較検討して、最適な選択をすることが大切です。
そして、自社ローンに対する怖さや不安を払拭するためにも、この記事の内容を参考にし、自社ローンを再評価してみてください。
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