「生活保護を受けたいけど車が必要……」「生活保護を受給する場合、車を売らなければダメ?」このように悩む人は少なくありません。しかし、基準を満たせば生活保護を受けながら車に乗ることは可能です。
この記事では、生活保護を受けると車を持てなくなる理由から注意点まで詳しく解説します。生活保護を受けたいと思っていても、車が理由で躊躇ってしまう人は、ぜひ参考にしてみてください。
生活保護受給中でも車(クルマ)を持てる?
生活保護とは、生活困窮者に憲法が定めている最低限の生活を保障し、生活を立て直して自活していけるように援助することが目的の制度です。生活保護を申請するには、預貯金や処分できる財産がないなどの条件が定められており、車についてもこれらと同様に所有できません。
生活保護を受けながら、燃料代や保険料などの維持費を払い続けるよりも、車を売却し、生活費に当てた方がよいと考えられていることがその理由です。そのため、原則として生活保護を受けながら車を保有することは原則認められていません。
生活保護申請前から所有する車はどうなる?
生活保護を受ける場合、原則として資産を持っていないことが申請する条件と定められています。車についても資産としてみなされることから、申請前に所有している場合は売却し、得たお金を生活費に充当するように指導されることが一般的です。
また、ローンを組んで車を購入している場合についても同じことがいえます。
生活保護で給付されたお金でローン返済をすることは認められていません。そのため、車を売却して得たお金をローンの返済に充てなければ生活保護の申請は不可能です。
しかし、特別な理由がある場合にのみ、車の所有を認められる可能性があります。まずはケースワーカーに相談してみましょう。
他人の車を借りて運転する場合は?
生活保護を受給している人は、他人の車を借りて運転することも基本的には認められていません。これは、万が一事故を発生させてしまった場合、損害賠償として請求されるお金が支払えない状況を回避するためです。
上記と同じ理由から、レンタカーなどの使用も原則認められていません。つまり、車を保有する費用だけでなく、事故などを発生させてしまった場合に発生する賠償の観点からも運転を認めていないといえます。
生活保護を受給すると車を持てなくなる4つの理由
生活保護を受給すると車を持てなくなる理由には、以下の4つが挙げられます。
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ここではそれぞれの理由を解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.資産とみなされるため
生活保護を受給する場合、原則として保有している資産があれば売却しなければなりません。車は日常的に使うものとしてだけではなく、資産として価値がある場合がほとんどです。
生活保護を受けるには、処分できる財産がないことが条件となっているため、車を維持できる金があるのであれば、原則として生活費用へと充てるようにケースワーカーから指示されます。
2.生活保護費をローンの返済に充てることができないため
保護費は最低限の生活を維持するために支給されています。そのため、車のローンが残っている場合、返済ができなくなることと同じ意味です。(保護費は最低限の暮らしに不足する金額を支給する制度)
また、車のローンを完済している場合は、資産として判断されることから、生活保護を受給するには売却することが求められます。
3.維持費がかかるため
生活保護には家賃を支払うための住宅扶助や、医療を受けるのに必要な医療扶助など、全部で8つの扶助があります。生活保護を受給するには、車の保有を原則として認めていないため、これに関連する扶助はありません。
そのため、生活扶助からガソリン代などを賄わなければならなくなり、生活保護を受けながら車を維持することは難しいと考えられています。
4.賠償金を支払うことが厳しいため
生活保護を受けながら車の保有が認められない理由として、重要なのは賠償能力が無いことが挙げられます。
車を運転する場合、事故を起こすリスクはゼロではありません。生活保護をもらっている人が万が一事故を発生させた際、多額の賠償金を支払うことは難しいといえます。
また、任意保険に加入するお金があれば、生活保護費がその分減ってしまうことから、車の保有は現実的ではありません。
生活保護受給中でも車の所有が認められる4つのケース
生活保護受給中でも車の所有が認められるケースには、以下の4つが挙げられます。
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ここではそれぞれのケースについて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.車がないと生活自体が困難になる場合
生活保護を受けなくても済むように必要な職業訓練や通院など、必要最低限の生活をするために車がなければならない状態として認められれば、車を所有し続けることができます。
たとえば、自分自身で移動することが難しい場合や、精神疾患を患っており公共交通を利用できない人、持病によって通院が必要な人などです。これら以外にも、公共交通機関が動いていない時間帯に通勤する人も対象となる場合があります。
2.自営業のために利用する場合
運送業や個人タクシーなど、自営業として働いている人が生計を立てるためには車が欠かせません。その場合、事業用品として保有することが認められる場合もあります。
営業車を使った仕事は、生活保護の生業扶助として制度にも認められている対象です。
この場合、生活保護を申請する前から営業車を持っていることが条件となりますが、経費と収入のバランスが見合っていない場合、手放すように指導されるおそれがあります。
3.公共交通機関の利用が難しい場合
地方や山間部など、公共交通機関が通っていない地域についても車の保有が認められる可能性があります。
また、都市部に住んでいる場合でも、通院先が遠方にある・公共交通機関やタクシーを利用するよりも自家用車の方が安く済むと判断されると、車の保有を認められる傾向にあります。
いずれの場合も、公共交通機関の利用が難しいと判断される場合に限って、車を所有し続けることが可能です。
4.半年以内に生活保護から脱却できる場合
就労する見込みが半年以内にあり、生活保護から脱却すると判断された場合、価値が低い車は処分対象とされないことがあります。
この場合、車を処分して生活費に充てるよりも保有している方がよいと判断されることが理由です。しかし、保有が認められる前提として、高年式のものや高級車などの資産価値が高くなるものは処分対象とされてしまいます。
生活保護受給中に車の所有申請をする際のポイントは5つ
生活保護受給中に車の所有申請をする際のポイントには、以下の5つが挙げられます。
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ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.資産価値の低いクルマを選ぶ
生活保護を利用しながら車を保有し続けるには、必要最低限の目的を遂行するために走行に問題ない程度の車を利用することが求められています。
申請条件としては、資産価値があまりなく、排出量2,000cc以下の車との定めがありますが、資産価値がどの程度であれば低いのかについては明記されていません。具体的な資産価値については、ケースワーカーへ相談するようにしてみてください。
2.車の使用目的を明らかにする
生活保護を受給している最中に車の保有・使用の許可を得るには、要件を満たしていなければなりません。
単純に「車が生活に必要」との理由では申請が通りにくいため、通勤や通院、子どもを保育園へ送迎するなどの使用目的を明確にしたうえ、ケースワーカーへ相談するようにしてみてください。
これらの理由がない場合は、車を保有し続けることは難しいといわざるを得ません。
3.申立書を用いた申請をする
生活保護制度の運用上、口頭で車を保有し続けることを申請することは難しい場合がほとんどです。そのため、車が生活に必要な理由を「申立書」としてまとめて申請する方法があります。
また、生活保護問題対策全国会議においても、申立書を使った申請が推奨されています。
「厚労省通知徹底活用」の中でも、自治体に宛てた申立書のテンプレートが無料で公開されているため、参考にしながら記述するとよいかもしれません。
4.ケースワーカーに相談する
生活保護を受給しながら車を持ち続けるには、車が欠かせない理由などを整理することが重要です。
たとえば、公共交通機関の利用が難しい場合「電車・バスが通っていない」「タクシー代が高額となる」などの内容と具体的な金額について提示するように、詳細な事情をケースワーカーに相談するようにしてみてください。
いずれの場合も、第三者から見て納得感がある理由である必要があり、ケースワーカーが具体的な事情を配慮してくれます。
5.就労により生活保護から脱却できることを証明する
半年を目処に就労することが見込まれ、生活保護から脱却できると判断された場合、車の所有が認められる可能性が高まります。
それには、求職活動の状況や就労予定、希望している職種などを具体的にまとめておくことが重要です。ケースワーカーへ相談する際、就労を証明できる採用通知書などを準備できると信頼性をより高めることが期待できます。
生活保護受給中に車を利用する際の注意点は4つ
生活保護受給中に車を利用する際の注意点には、以下の4つが挙げられます。
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ここではそれぞれの注意点について解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.許可された目的以外は使わない
仕事や送迎で車を使うことが認められた場合は、使用目的に沿った利用については問題ありません。しかし、原則として私用で車を使うことは認められていないことに注意が必要です。
生活保護は、最低限の生活を保障するための制度として設けられているため、ドライブなどの趣味として車に乗るなどの行為は、娯楽として見なされてしまいます。車の目的外の利用は避けるようにしてください。
2.排出ガスに規制が設けられる
車の所有が認められた場合においても、好きな車種に乗れる訳ではありません。使える車には排出ガスに規制が定められています。
現在、2,000ccを超える車の使用は禁止されており、軽自動車やコンパクトカーなどをそのまま利用できる可能性があります。つまり、移動に必要とされる最低限の機能性を有しているとされている車以外は原則保有することはできません。
3.他人名義でローンが組まれている車も所有できない
他人名義でローンを組んでいる車の所有は、法律違反となるため禁止です。これは生活保護の受給に関わりはありません。
刑法において名義貸しは「詐欺罪」に該当します。そのため、生活保護の取り消しに留まらず、刑事罰を処されるおそれもあります。
もしも、自分が誰かに名義を貸してしまっている場合、早急に警察や弁護士へ相談することをおすすめします。
4.親族の理解・協力が必要になる
生活保護を受けながら車に乗る場合、親族の理解や協力が必要です。
現状の経済状況が思わしくなく、お金の使用用途に制限がある状態で賠償を発生させてしまうと、状況をより悪化してしまうことにつながります。
車の所有が認められた場合、補償費用は必要経費として計上することが可能です。しかし、対人・対物の範囲にのみ適用されます。
万が一、車体の故障などがあった場合、親族に費用を立て替えてもらう必要があるため、親族に迷惑をかけてしまうため、これらの点をあらかじめ理解を得ておかなければなりません。
5.車の購入や維持に必要な費用を用意する必要がある
保護費は最低限の生活を営むために支給されるものです。そのため、車の購入費用や維持費に充てることはできません。
生活保護受給中に車の保有・使用の許可を得た場合でも、車の購入や維持にかかる費用は自身で用意することが求められます。経済的に車を購入することが難しい場合、カーリースなどの保有以外の方法も検討してみてください。
生活保護受給中の車(クルマ)でよくある3つの質問
生活保護受給中の車(クルマ)でよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
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ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
質問①生活保護受給中に購入する車の候補とは?
生活保護受給中に購入する車の候補には、以下の車種が挙げられます。中古車の相場と併せてご紹介します。
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これらは全て軽自動車となっており、低燃費かつ低価格、日常利用するうえで十分な安全性能が担保されているといえるでしょう。
質問②生活保護を受ける際に知り合いに名義変更することは可能?
車のローン返済中に生活保護を受けなければならなくなり、車を手放さなくてはならないことも考えられます。この場合、手放すことを理由として知り合いに名義変更することは可能です。
しかし、場合によっては資産隠しと見なされるおそれがあります。たとえば、名義だけ変えて、これからも自身が使用する場合がこれに該当します。そのため、自身が使用する前提で名義変更することは禁止です。
質問③レンタカーやカーリースは利用できる?
レンタカーやカーリースも、生活保護者は原則運転できません。賠償能力がないと判断されてしまう以上、運転できないと覚えておく必要があります。
免許証は有効であるため、軽い気持ちで運転しても大丈夫と判断してしまうかもしれません。
しかし、万が一事故を発生させた場合、自身で解決できる能力がないことを覚えておく必要があります。もしも、親族に賠償を肩代わりさせなければならなくなった場合、周囲の人を不幸にさせてしまうおそれがあります。
まとめ
生活保護を受給しながら車を保有・使用できるかについて解説しました。原則として、車の利用は認められていませんが、生活に必要と判定されると車を保有することが可能です。
しかし、この場合においても、車の資産価値がない・排気量に規制がある・明確な利用目的があるなどの定めがあります。これらはケースワーカーの判断となるため、事前に相談するようにしましょう。
また、KSTオートでは生活保護を受給している人にもおすすめできる車を多く用意しています。所有申請する車を悩んでいる方は、ぜひKSTオートへご相談ください。
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